業務別・階層別マネジメント手法と必要なスキルをまとめて解説
企業において、目標達成のために重要視されているのがマネジメントです。一括りにマネジメントと言っても様々な方面からのマネジメントが存在し、組織における目標達成のためにはどのマネジメントも必要不可欠です。また、マネジメントを行うにあたっては行う側のスキルも必要になってきます。
この記事では、マネジメントの種類別の解説や、マネジメントに必要なスキルについても解説していきます。
組織運営におけるマネジメント手法
組織の運営におけるマネジメントの手法には以下の3つがあります。
チームマネジメント
プロジェクトマネジメント
ナレッジマネジメント
まずは、それぞれのマネジメント手法について詳しくご紹介していきます。
チームマネジメント
チームマネジメントとは、組織の目標達成や生産性向上のためにメンバーやチームをマネジメントする手法のことです。主に中堅職員やリーダーに求められるスキルで、部下やメンバーと円滑なコミュニケーションをとりながら進めていきます。
チームマネジメントによりメンバー個人の能力が発揮されることで生産性が上がり、結果としてチーム全体の生産性やパフォーマンスが向上することがメリットです。
また、チーム内のコミュニケーションやチームワークが向上することで様々な視点から物事を捉えることができるので新しいアイデアの提案にも繋がっていきます。
さらに、チーム全体の団結力も高まるため、悩みがあるときにチームメイトに相談できるようになるなど、人間関係の構築にも効果的です。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントは、プロジェクトを成功させるために中堅職員やリーダー職が行うマネジメントのことです。納期や限られた予算の中でプロジェクトの立案、人員配置、コスト管理、納期などプロジェクト達成のために必要な工程を管理します。
プロジェクト成功のためには限られた人員や予算でタスクに取り組み、納期までに成果物を納品しなければなないため、チームが協力し合うことが重要です。
プロジェクトマネジメントにより目標達成のためにチーム全員が自ら考えて協力しながら仕事をするとともに、納期までに品質を落とさず納品するという仕事の効率化も期待できます。
さらに、チームとして仕事をする上でコミュニケーションも必須になるため、コミュニケーション能力の向上にも効果的です。
ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントは、個人が業務を通して得た知識やノウハウ、スキルなどを社内で共有するという手法です。
経験から得た知識やノウハウ、スキルなど個人が持つ「暗黙知」を、言葉や文章で表した「形式知」に変換することが重要なポイントです。
例えば、営業成績がトップの人の話術や振る舞いを他の社員に共有すれば、他の社員は「今後この話術を取り入れてみよう」などと考えるきっかけとなります。
このように知識などを他人に共有することで、組織全体のスキルアップやパフォーマンス向上、さらには社内全体のモチベーションアップに繋がっていきます。
また、知識やスキルを言語化することで、自分自身が改めて業務を行うに当たってのポイントを振り返るきっかけにもなるでしょう。
人材管理におけるマネジメント手法
人材管理におけるマネジメント手法は以下の3つがあります。
タレントマネジメント
モチベーションマネジメント
パフォーマンスマネジメント
それぞれの手法について詳しくご紹介していきます。
タレントマネジメント
タレントマネジメントは、タレント(従業員)が持つスキルや経験、得意分野などを把握し、適切な人材育成や人員配置に活かすためのマネジメント手法です。
従業員一人ひとりのスキルや経験、得意分野を把握することで適材適所の人材配置が可能となります。
例えば、経理で能力を発揮できないAさんが実はトークスキルが優れているとすれば営業の方が能力を発揮できる可能性が高いでしょう。
このように、適材適所に人員配置を行うことで従業員にとってはモチベーション向上に繋がり、結果として仕事の生産性も上がります。また、会社にとっても各部署が求める人材を割り当てることができるため、従業員にとっても会社にとってもメリットが大きいでしょう。
特に人事異動などの際に活用されており、会社全体のパフォーマンス向上にも必要不可欠なマネジメントです。
モチベーションマネジメント
モチベーションマネジメントは、従業員が高い意欲をもって業務を行い、生産性や成果を高めるために「動機づけ」をするマネジメント手法です。
モチベーションは、興味、意欲、関心など人の内面から生まれるやりがいや達成感などの「内発的動機づけ」と、報酬や昇給など外的要因から生まれるやりがいや達成感から生まれる「外発的動機づけ」に分けられます。
従業員のモチベーションアップのためには内発的動機づけと外発的動機づけの両方が必要です。モチベーションマネジメントを行うことにより、従業員の仕事に対する意欲が高まると、生産性の向上や社内全体の活性化にも繋がっていきます。
しかし、モチベーションアップは短期間で達成できるものではなく時間がかかるため、根気強く社員一人ひとりと向き合っていくことが大切です。
パフォーマンスマネジメント
パフォーマンスマネジメントは、従業員のパフォーマンス向上のために上司が一緒に目標設定を行い、行動や結果に対して適切なフィードバックを行うことで目標達成を目指します。
会社運営の基本となるPDCAサイクルを回すために必要なマネジメント手法です。
パフォーマンスマネジメントにより個人に合った適切な目標を設定することで社員のモチベーション向上に繋がるとともに、目標達成のために社員自らが自主性をもって行動するようになるため主体性も生まれます。
また、フィードバックを行うことで上司と部下の間にコミュニケーションが生まれることで、信頼関係の構築にも効果的です。
メンタルヘルスにおけるマネジメント手法
メンタルヘルスにおけるマネジメント手法には以下の3つがあります。
メンタルヘルスマネジメント
アンガーマネジメント
ストレスマネジメント
それぞれの手法について詳しくご紹介します。
メンタルヘルスマネジメント
メンタルヘルスマネジメントは「心の健康管理」のことを指します。従業員の悩みや不安に寄り添うことで精神的な負担を軽減し、従業員が個人の能力を発揮して活き活きと働くための職場づくりに重要です。
近年、職場における人間関係や過重労働、ハラスメントなど過剰なストレスで休職や離職、最悪の場合は自殺に繋がるケースも増加しています。
メンタルヘルスマネジメントで従業員の悩みに寄り添うことで仕事へのモチベーションが向上し仕事の質も上がるとともに、社内全体の活性化や業績向上、離職率の低下にも繋がるため、会社へのメリットも大きいです。
アンガーマネジメント
アンガーマネジメントとは、怒りの感情をコントロールし、うまく付き合っていくための心理トレーニングです。あくまでも怒りをコントロールするのであって、怒りそのものを否定するわけではありません。
アンガーマネジメントを行うことで他人の価値観を受容できるようになり、社内の人とのコミュニケーションも円滑化します。そのため、結果として離職・休職率の低下や生産性の向上にも繋がっていきます。
さらに、自分が怒るポイントも把握でき自己分析が可能になるため、社内だけでなくプライベートにおいてもストレスを減少できるでしょう。
ストレスマネジメント
ストレスマネジメントは、ストレスをコントロールし、うまく付き合っていく手法を指します。
ストレスマネジメントにおいてまず大切なのは「ストレスに気づく、原因を知ること」です。人は無意識にストレスを抱えている場合も多く、気づかないまま過ごした結果、体調不良や精神疾患を患ってしまうこともあります。
手遅れとならないためにもストレスに気づき、原因を知ることが大切です。
自分のストレス要因がわかれば、ストレスの少ない方法を選択して、周りに相談するきっかけにもなります。ストレスが軽減されれば従業員の精神面が健康になり、結果として職場環境の改善に繋がります。
階層別マネジメント
階層別マネジメントには以下の3つがあります。
トップマネジメント
ミドルマネジメント
ロアーマネジメント
3つの階層別マネジメントについてそれぞれ詳しく紹介していきます。
トップマネジメント
トップマネジメントは、会長や社長など会社のトップである経営者たちが会社や組織の経営方針を決定し、計画の立案や運営方針、事業戦略などを決定することです。
トップマネジメントにおいては、強いリーダーシップとチーム力が重要です。経営者層は、文字通り会社を動かしていくトップであり、単独で方針を決定してしまっては視野が狭くなると同時に負担も大きくなってしまいます。
会社を牽引していくチームの一員として、他のトップと協力しながら行うことで様々な視点からの意見を取り入れることができ、より良い会社づくりへと繋がります。
ミドルマネジメント
ミドルマネジメントは、部長や課長などの中間管理職が行うマネジメントです。トップマネジメントをサポートし、上層部が決定した経営方針や事業戦略などを部下に伝達する役割があります。
ただ上層部からの指示を伝達するだけでなく、実際に目標を達成できるような人材育成を行うとともに進捗状況などを随時把握し、現場を監督することも必要です。
また、部下からの意見や現場における問題点などを上層部に伝達する役割も担っており、社内の橋渡し役といえます。
橋渡し役として、ミドルマネジメントにはコミュニケーション能力が求められます。
日頃から社員との意思疎通を積極的に行う必要があります。
ロアーマネジメント
ロアーマネジメントは、経営者層や中間管理職の下に位置する係長や主任、リーダーなどが行うマネジメントです。
ミドルマネジメントから受けた指示をもとに、実際に現場で働く従業員へ明確に伝達し、トップマネジメントが設定した目標達成のために現場を指揮・監督・統制する役割があるためリーダーシップのある人材が求められます。
実際に日々従業員と関わる立場であるため、従業員からの信頼が非常に重要です。信頼関係を構築していくために日頃からのコミュニケーションを大切にし、従業員が働きやすい職場づくりに努めていく必要があります。
マネジメントに必要なスキル
ここまでマネジメントの種類をご紹介してきましたが、マネジメントには以下のようなスキルも必要です。
課題分析力・課題解決力
プロジェクト管理力
意思決定力
コーチング力
必要な4つのスキルをそれぞれ解説していきます。
課題分析力・課題解決力
マネジメントには、組織の目標達成のために客観的なデータをもとに課題を正しく抽出し、問題点を分析する力が必要です。
業務において何かトラブルが起きた場合や進捗が遅れている場合など、すべての問題は根本をたどれば原因が存在しますが、課題分析力・課題解決力がないと業務において何か問題が発生しても根本の原因がわからず問題が解決しません。
その結果、定められた目標が達成できず、クライアントからの大きなクレームにも繋がる場合もあり、会社全体に大きな損失を与えてしまうこともあります。
このような取り返しのつかない事態を防ぐためにも、客観的なデータから課題を抽出して、解決するための筋道を立てられる「論理的思考」を身につけることが必要です。
また、トラブルが発生したときはもちろんですが、定期的に課題の抽出を行うことでよりスムーズに業務が進行します。
プロジェクト管理力
プロジェクトを成功させるためには、PDCAサイクルをもとに目標達成までの道のりから逆算して目標・ゴールの設定、人員配置、スケジュール管理、進捗管理などが必要になります。
プロジェクトは定められた予算の中で納期までにクライアントへ質の高い商品を納品する必要があります。まずは納期やどんなモノを作るかなど目標を設定し、そこから逆算してスケジュールを立て適切な人員を配置し、プロジェクトに取り掛かります。
しかしプロジェクトがスケジュール通り問題なく進むとは限らず、問題が発生することもしばしばあります。プロジェクトを納期までに完遂するためにも、問題を早い段階で把握・分析・解決することが必要であり、そのためにプロジェクト管理力が必要となります。
プロジェクトは問題発生時だけでなく、短期・中期・長期的に管理していくことが大切です。
意思決定力
意思決定力は、様々な意見がある中で自分の意志に加えて客観的な判断材料をもとに方向性などの意思を決定するスキルのことです。
特に会社内のリーダー的な立場の人たちは様々な場面で決断を迫られます。ここでリーダーの立場を利用して自分のやりたいことや方向性に押し進めてしまっては、一緒に働く従業員の信頼を失ってしまいます。
また、多くの意見に耳を傾けるのは良いことですが、意見を聞きすぎるがあまり決断に時間がかかってしまうのもプロジェクトの進行などが遅れてしまう原因となります。
意思決定は時に最初のプランを大きく変えなければならず、決断が困難になる場合もあります。そういった時に正しい選択ができるよう、普段から周りの意見を取り入れつつ自分の意思と客観的材料を総合的に判断し、迅速かつ慎重に決断する力を身に着けておく必要があります。
コーチング力
コーチング力は、従業員一人ひとりの長所やスキルなどを把握し、業務において能力を最大限発揮できるように導くスキルのことです。
コーチングのポイントは、相手に正解を与えるのではなくヒントや新しい視点を与えることで、従業員が自ら考えて行動して結果を出し、さらなるスキルアップに繋げる点です。あくまでも従業員の自発性・自主性を重視します。
従業員の自発性・自主性を育てることで課題解決や目標達成のために自ら考えて行動する姿勢が生まれます。
コーチングの効果を最大限発揮するためにも、定期的なフィードバックが重要です。1on1ミーティングなどで定期的に現状を把握しフィードバックを行うことでさらに新たな気づきを得られ、次回までの目標が明確となりさらなるステップアップに繋がります。
コーチングは指導する側のスキルが非常に大切なので、普段から従業員とのコミュニケーションを大切にしていきましょう。
まとめ
この記事では、業務別・階層別にマネジメント手法と必要なスキルを解説してきました。マネジメントには様々な種類がありますが、どの種類にも共通している目的は「仕事の生産性・パフォーマンス・モチベーションの向上」です。
マネジメントがうまくいくと個人だけではなく、会社全体の業績アップや働きやすい職場環境づくりにも繋がります。このマネジメントには多くのスキルが必要となり、すぐに身につくものではありません。
普段から従業員に対して積極的にコミュニケーションをとり、信頼関係を築いておくことが大切です。