1on1ミーティングの目的とは?特徴やメリット、必要性を解説
部下との関係性を強めるマネジメントの一つとして、1on1ミーティングを取り入れる企業が増えています。しかしながら、目標設定面談などほかの面談との違いが曖昧のまま行ってしまい、形式化していたり雑談で終わってしまったりするケースも少なくありません。
1on1ミーティングを効果的に活用するには、目的を明確にし、上司が場を主導する必要があります。1on1ミーティングが持つ、他のマネジメント手法とは異なる特徴を学び、職場で取り入れる必要性を考えてみましょう。
1on1ミーティングの目的とは
そもそも1on1ミーティングは、部下の成長を促すための場です。目標を設定したり、進捗や成果を確認するミーティングとは目的が異なります。
部下と上司が1対1で、週1や月1など短いサイクルで定期的に行います。1on1ミーティングで扱う内容は自由です。それゆえに、部下の知らなかった希望や悩みに触れることができます。
心理的安全性の醸成
部下が上司に対して1対1で心を開いて話をすることができる1on1ミーティングは、「心理的安全性」を醸成する場となります。心理的安全性とは、何を言っても批判されない、拒絶されないと思える心理状態のことです。
「仲が良い状態」や「空気を読む」と混同されがちな心理的安全性ですが、実際は「どのようなリスクをとっても安全である」雰囲気や状態のことを指します。空気を読む必要がないため、部下は安心して会議や面談で意見を発言でき、それにより組織のイノベーションが生み出されるというものです。
心理的安全性の醸成には、「きちんと目を見て聞く」「肯定的な相槌を打つ」といったコミュニケーションの積み重ねが必要です。もちろん1on1ミーティングだけでなく、会議や普段のやり取りなどさまざまな場が心理的安全性に関わります。
しかし業務を脇に置き時間を作る1on1ミーティングだからこそ、業務報告の時間では言い出せない悩みや課題を部下が口にすることができ、それが心理的安全性の醸成につながります。
従業員のエンゲージメント向上
心理的安全性が醸成されていると、部下の会社への自発的な貢献が高まり、エンゲージメントの向上が期待できます。1on1ミーティングで、「話を聞いてもらえる」「自分を見てくれる」といった、職場への安心感や、職場からの期待感を持った従業員は、高い意欲をもって働くことができます。
たとえ、業務配分や人間関係、将来のキャリアなどに不満を抱いている場合でも、1on1という「なんでも話せる場」があることが、不満の解消につながります。1on1ミーティングの場が、部下の職場への信頼感を強めるきっかけとなり、好循環を生み出すことができるのです。
マネジメントの向上
1on1ミーティングは部下だけではなく、場を主導する上司自身のマネジメントスキルの向上にもつながります。1o1ミーティングの場を上手く機能させるために、上司には「傾聴力」が求められます。
業務以外のことを話す1on1ミーティングであっても、部下のプライベートに土足で踏み込むような話題の振り方は厳禁です。
また、「何か悩みはある?」と部下に丸投げするような問いかけもおすすめできません。部下の悩みに耳を傾け、考えを引き出すとともに、部下が抱える課題や悩みを解決するサポート力が求められます。
1on1ミーティングを効果的に活用している職場では、上司がそれぞれの部下に対して、適切なマネジメント方法を把握できているといえるでしょう。
1on1ミーティングのメリット
1on1ミーティングの場を効果的に活用することで、部下との信頼関係が強まります。また、些細な変化にも気づきやすくなるため、上司として素早いフォローが可能です。結果として、離職率の低下も期待できます。
信頼関係の構築
「仕事ができる熱血上司」が信頼を集める構造は、今や変化しているといえます。育児休業や介護休業など、職場でさまざまな要素を抱えて働く人は珍しくありません。
こうした状況では、プレイヤーとして優秀な上司であれば、信頼を集められるとは限りません。部下の悩みに心を寄せ、それぞれの事情を考慮しつつ最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、サポートできる上司が支持されるのです。
部下の話に耳を傾ける1on1ミーティングは、部下と信頼関係を構築する絶好の機会といえるでしょう。
部下の状況の把握
日々の業務とは別に、雑談など仕事とは直接関係のない話題をかわす機会を設けるのは難しいものです。とくに近年はリモートワークも広がっており、部下とは直接顔を合わせずにマネジメントを行う機会も増えています。
1on1ミーティングで、あえて業務から離れて会話をする場を設けることで、部下の状況を把握しやすくなります。1on1ミーティング中に、「そんなことを思っていたのか」という意見が出てくることもあるでしょう。
また「そうだと思っていた」と、日頃から心配していた点を確認できるかもしれません。週1や月1など、短いサイクルで定期的に実施する1on1ミーティングが、部下とのコミュニケーションの窓口になってくれます。
離職率の低下
多くの場合、人が離職を決めるのは、「人間関係の不満」「労働条件の不満」「仕事内容への不満」など、複数の不満要因が積み重なったときといわれています。
逆にいえば、「仕事内容には満足しているけれど、給与水準が不満」「職場の人間関係は好きなのだけれど、労働時間が長すぎる」など、満足と不満が入り混じった状態であれば、不満点に上司が関わることにより、離職を予防できる可能性があります。
また、部下の離職を直接防ぐことは不可能でも、日頃から1on1ミーティングを真摯に行うことで、それぞれの部下の状態の把握につながります。部下の要望をきっかけに実施する施策の積み重ねが、より働きやすい職場を作ってくれるでしょう。
1on1ミーティングの特徴
1on1ミーティングには、いくつかの特徴があります。具体的には「話す内容」「場でのコミュニケーション」「ミーティングの結末」です。以下に、1on1ミーティングの特徴について見てみましょう。
普段考えていても話さないような内容を取り扱う
1on1ミーティングが支持されるのは、「普段考えていても口に出せないようなこと」を話すきっかけとなるからです。この点からも、「1on1ミーティング=雑談」ではないことが分かります。業務以外の話題で、以下を意識しましょう。
・アイスブレイク
いわゆる「雑談」です。天気や趣味の話題などが含まれます。大事なのは、終始雑談で終わらないこと。最初に部下との共通項となる話題をアイスブレイクとして差し込むことで、話しやすい雰囲気を作ります。
「この前の提案資料、お客さんの反応よかったよ」と、仕事面でのポジティブな話を振ってみるのも部下の緊張をほぐすのに効果的です。
・プライベートな話題
1on1ミーティングで、部下の健康状態や生活状態を把握するのに有効な話題です。「家族」「健康面」「生活面」「趣味」などの話題が当てはまります。
すでに共有している話題があれば「最近〇〇はどう?」と振ってみるのがいいでしょう。遅刻や早退など勤怠面で気になる点があれば、生活面や健康面、家族に変化があったかなど聞いてみましょう。
・キャリア
部下が今後どのようなキャリアを積みたいのか、自分の弱みや強みを認識しているかなどを知ることで、部下のキャリアプランを考えるのに役立ちます。
・業務や組織について
1on1ミーティングは、部下の業務や組織についての不満を受け止める絶好の機会です。部下の改善案を採用すれば、部下のモチベーションもアップします。
これらはテーマの一例です。部下の関心ある話題を取り上げる手法として「トップ5」という、お互いに話したい内容を5つ紙に書きだし、1on1ミーティングの内容を決めるものもあります。
傾聴、共感
1on1ミーティングで部下の状態をしっかり把握するには、傾聴が欠かせません。傾聴とは、アイコンタクトや相槌など、肯定的な反応を示しながら話をきくことです。
このとき部下の話の途中で「それは〇〇じゃないのかな」など、自分の意見を挟んでしまうのは極力控えましょう。1on1ミーティングは部下を説得する場ではありません。部下が抱えている不満や問題に目を向け、改善点を部下主導で打ち立てる場です。
そのため、部下の話をもっと聞きたいという場合には、「今の状況を教えてください」「〇〇についてもう少し詳しく話してください」など、部下がより話しやすくなるフレーズを用いるといいでしょう。
自発的な判断へと導く
1on1ミーティングのゴールは、問題に気づき、課題を設定し、その課題解決に向けた方法を部下自身がプランニングすることです。上司は、答えをすぐに教えるのではなく、解決に導く問いかけをするよう心がけます。
たとえば、部下が問題を深堀できるよう、「うまくいかない原因は何があると思いますか」と問いかけてみるのもいいでしょう。部下自身が解決策を形にできるよう、「何かできるサポートはありますか」といった手の差し伸べ方も有効です。
1on1ミーティングの必要性
最後に、1on1ミーティングを実施する必要性について改めて考えてみましょう。業務から一旦離れ、1対1で話をする機会は、部下のことをよく知るための貴重な時間です。
また部下にとっても、日頃は言い出せない話を切り出すきっかけとなります。このような時間は、仕事とは異なる濃密なコミュニケーションを生み出します。
より良い職場環境作り
近年、「多様性」という言葉に代表されるように、職場でさまざまな雇用形態の人が働くことが珍しくなくなりました。
ひと昔前なら、「残業を厭わない正社員」のみが活躍していたのかもしれませんが、現代では育児休業取得率の上昇と共に、共働き世帯も増加しており、時短勤務、テレワーク、ワーケーションなど働き方自体も多様化しています。働く時間帯や働く場所が一律でない人々が、共に働き成果を出すには、相互理解が欠かせません。
「すれ違い」が多いと、相手に不信感を抱いてしまいます。部下との接点が少なくなり、職場でのパワハラや業務量の多さに悩んでいることに気づけなくなるかもしれません。チームメンバーが何に困っているのか、どのような働き方がベストと思っているのかなど、一人ひとりとの丁寧なコミュニケーションの積み重ねが、部下の「声」に気づくことにつながります。
1on1ミーティングは、コミュニケーションの入り口です。そこで得た情報や、発見した課題に対して、よりよくしようという改善の取り組みを続けることで、誰もが働きやすい職場が作られます。
まとめ
部下と1対1で話す場を設ける1on1ミーティングは、部下が日頃から抱えている悩みや不満に向き合う貴重な機会です。リラックスした雰囲気で行い、業務から離れ部下の話に耳を傾けることで、心理的安全性が醸成されます。
1on1ミーティングで口にした課題が解決に向かうと、部下自身のモチベーションも高くなります。「上司は自分のことを見てくれる」という信頼感が高まり、会社へのエンゲージメント向上も期待できます。
1on1ミーティングは「これが正解」という唯一の方法があるわけではありません。部下一人一人に合わせた、話題や話し方を模索するなかで、場を主導する上司自身のマネジメントスキルも向上するでしょう。