コーチング型マネジメントとは?メリット・デメリット・注意点を解説
コーチングマネジメントは、従来の「コーチング」と「マネジメント」を融合した新しく現代社会に適したマネジメント方法です。うまく活用すれば非常に効果的な手段となります。
この記事では、マネジメントにコーチングを取り入れたい方や方法を知りたい方のために、コーチング型マネジメントとは何か、メリットやデメリット、コーチングに必要なもの、注意点などについて詳しく解説していきます。
コーチング型マネジメントとは
コーチングマネジメントについて詳しくご紹介する前に、まずはそもそもコーチング型マネジメントとはなにか、従来のマネジメントとの違いや求められる背景について解説していきます。
コーチング型マネジメントとは?
コーチング型マネジメントとは、コーチングのスキルを活用した新しいマネジメント方法です。コーチング型マネジメントの目的は「部下の自主性・自発性を促すこと」です。
業務上で何か問題が起きた際や壁にぶつかった場合に周りの人に頼りすぎるのではなく、部下自らが考えて自主的に問題を解決できるようなスキルを身に着けさせます。
自主的に考えて行動できるようになると、部下自身の業務におけるスキルアップやモチベーションの向上だけでなく、プライベートにおいても自主的に行動する力が身に付きます。
さらに、個人へのメリットだけでなく会社全体の業務の効率化にも繋がっていくため、コーチング型マネジメントは現在非常に注目を集めているマネジメント方法です。
従来のマネジメントとの違い
コーチング型マネジメントのポイントは、従来会社内で行われてきたマネジメントとは異なるという点です。
従来のマネジメントは、上司が部下に対して指示をだし、その指示通りに部下が行動するという形でした。
しかし、従来のマネジメントは「指示されていないこと以外はやらない」「指示があるまで行動しない」といった結果になってしまうことも多いとともに、成果重視であったため失敗をしてはいけないという風潮がありました。
一方でコーチング型マネジメントは、指示を待つのではなく部下が自主的に行動し、失敗しながら成長していくことを目的としています。
ここで重要なのが、上司は一切指示をしないのではなく、部下の主体性を尊重しつつ必要な時にはサポートを行います。
コーチング型マネジメントが求められる背景
現代でコーチング型マネジメントが求められる理由は、ビジネス環境や人、組織が変化したことが理由です。
昔と比べてビジネス環境は過去の実績などにとらわれない部下の育成や、マンパワーが不足している中での効率的かつ効果的な人材育成が求められています。
また、人や組織も変化しており、多様性が重視される社会となった現代では人種や性別にとらわれない教育や、転職が増加する中で部下に長期的に働いてもらうための職場づくりが必要です。
このような環境や人、組織の変化に対応していくためにはマネジメントする側のマネジメント方法を改革していく必要があり、そのために注目されているのがコーチング型マネジメントです。
コーチング型マネジメントのメリット・デメリット
次はコーチング型マネジメントのメリット3つとデメリット2つについてご紹介します。
メリットとデメリットをそれぞれ理解することでより効率的なマネジメントが可能になるので、しっかりと理解した上でマネジメントを実施してください。
メリット
コーチング型マネジメントのメリットは3つあります。
(1)部下の自主性が育つ
コーチング型マネジメントは指示を待って行動するという従来のマネジメントとは異なり、業務における進行の計画や問題が起きた際の解決方法などを自ら考えて行動するため、部下の自主性が育ちます。
(2)部下の個性や強みを生かすことができる
コーチング型マネジメントを実施する際、まずは上司が部下と話し合いをし、部下の個性や強み、得意・不得意などを細かく把握することで一人ひとりに適したマネジメントを実施できます。
一人ひとりに寄り添ったマネジメントを行うことで、長所を伸ばしたり潜在的な可能性を発見するとともに、短所や苦手なことを克服・改善できます。
(3)モチベーションの向上
自分で考えて行動し、問題解決ができるようになると自信につながり業務に対するモチベーションの向上が期待できます。個人のモチベーションの向上は社内全体のモチベーションアップやスキルアップにもつながるためメリットが大きいでしょう。
デメリット
コーチング型マネジメントのデメリットは2つあります。
(1)効果が現れるまでに時間がかかる
コーチング型マネジメントは上司が指示を出すのではなく、部下自身が考えて行動するため従来のマネジメントよりも効果が現れるまでに時間がかかります。
考えてから行動に移すまでに時間がかかる場合もありますし、そもそも考えて行動することの重要さを理解してもらうところから始まるので、どうしても時間を要します。
(2)コーチングする側のスキルによって効果にばらつきが出る
コーチング型マネジメントは、マネジメントする側のスキルで効果が左右されます。部下の表向きの行動や性格だけを判断する上司と、細かくヒアリングをして個性や強みを把握する上司では、当然後者の方が効果的なマネジメントができるため効果も現れやすくなります。
コーチングに必要となるもの
では、具体的にコーチングに必要なのはどんなスキルなのでしょうか。コーチングに必要なスキルは「傾聴力」「質問力」「承認力」で、最も重要なのは部下と上司の信頼関係です。
次はコーチングに必要となるスキルについて解説していきます。
傾聴力
傾聴力とは「相手の話を細部まで徹底的に聴くことができる力」で、相手のことをより深く理解するために必要なスキルです。
コーチをする側の人間も、まずは相手のことを知らないと教えることもできませんし、効果も十分に得られません。
効果的なコーチングを行うためにはまず相手の話を聴き、性格や強み・弱みなどをしっかりと理解する必要があります。
相手の話を聞くときは適度な相槌やリアクションを取り入れて相手に話しやすいと思ってもらえるような雰囲気を作り、「この人は信頼できる」と思ってもらうことが重要です。
質問力
質問力は「相手に気づきを与える力」です。ここで重要なのは詰問や非難、「はい・いいえ」で答えられるようなクローズドクエスチョン質問をしてはいけません。
例えば何かミスをしてしまった場合、「なんでこんなミスしたの?」という非難をしたり責めたりするような問いかけはNGです。
この問いかけの場合は「そのミスをしてしまった原因はなんだと思う?」など、相手が自ら考えて答えを導き出せるようなオープンクエスチョンをすることが大切です。
自ら考えることにより、自分でも気づくことができなかった根本的な部分や新たな視点を得ることができます。
承認力
承認力とは「相手の言うことを認め、相手の存在を認めること」です。相手の話をしっかりと聞いて、非難や他人との比較をすることなくありのままを受け止めます。
人間は、自分の存在を認めてもらえることで安心感を得られるとともに、「この人は信頼できるな」と思ってもらうことができるため信頼関係の構築にも役立ちます。
また、承認されるとさらに「頑張ろう」「次はこの目標を達成しよう」といったモチベーション向上にも繋がっていきます。
承認において重要なのは成果のみを評価するのではなく、その成果を得るための努力や過程なども評価することです。
部下との信頼関係
コーチングにおいて欠かせないのは対象者(部下)との信頼関係です。部下からすれば、普段から自分の話をよく聞いてくれて観察してくれている上司と必要な時だけコミュニケーションをとる上司では前者の上司を信頼しますし、前者の上司のことを信頼したくなります。
信頼関係が構築されていないと、いくら上司が部下に話やアドバイスをしたところで信頼していないので話を聞いてくれない、アドバイスを参考にしてくれないといった事態も起こります。
このようにコーチングにおいて最も重要なのは信頼関係です。普段から部下とのコミュニケーションを大切にし、よく観察していくことが求められます。
マネジメントでコーチングを取り入れる時の注意点
マネジメントにコーチングを取り入れるためにはいくつかの注意点があります。このポイントを押さえておかないと、せっかくのコーチングも意味がなくなってしまいます。コーチングをより効果的なものにするための注意点を解説していきます。
1対1で進める
コーチングにマネジメントを取り入れる際は1対1で進めていくことがポイントです。集団でコーチングを行ってしまうと、部下それぞれのスキルなどに配慮したマネジメントを行うことができずに、効果に個人差が生まれやすく自信を失ってしまいます。
1対1(1on1)形式で対話を進めていくことで部下一人ひとりのことを深く理解できるとともに、部下にとっても普段言えないことや相談がしやすくなるでしょう。
また、1対1でマネジメントを行うことで部下一人ひとりに合った目標設定や教育計画が立案できるため効果が表れやすくなります。
短期間での結果を求めない
コーチングの効果が表れるのには時間がかかります。最初にもお伝えしましたが、現代では多様性が重視されており、外国人や障碍者の雇用も増えているためコーチングを受ける部下によっては効果が表れるのに非常に時間がかかる場合があります。
また、コーチング自体も失敗を重ねながら学んでいく手法のためどうしても短期間で結果を出すことは難しくなるので、根気強いコーチングが必要です。
対象者とコーチの相性
コーチングの効果が十分に発揮されるか否かは、コーチングする側と対象者(部下)の相性によって変わってきます。やはり、手順を無視していきなりコーチングを始めても十分な効果は得られませんし、対象者側も戸惑ってしまいます。
コーチングをするにあたっては信頼関係の構築が非常に重要なポイントです。コーチングをする側は、コーチングの前にまず普段から部下とのコミュニケーションを大切にして業務や人間関係の悩みなど部下の現状を細かく把握していき、信頼関係を構築することが重要です。
ある程度の信頼関係が構築されたら、プロセスにのっとってコーチングを行いましょう。
まとめ
コーチング型マネジメントは、急速に変化し多様性が重視される現代社会において今非常に注目されているマネジメント方法です。
効果が出るまでに時間がかかるマネジメント方法ではありますが、部下の主体性を育てるには非常に有効な手段であり、多くの企業が取り入れ始めています。
しかし、いくら効果的な手段とはいえ、基礎となるのはコーチングする側の上司とされる側の部下の信頼関係です。
普段からの信頼関係の構築がコーチング成功のカギだと理解しておきましょう。