業務の棚卸とは?棚卸のやり方・メリット・業務改善に向けたポイント
働き方改革やDX推進により、業務改善を行う企業が増えています。業務改善を行うにあたっては、既存業務の課題抽出や問題発見が欠かせませんが、そんな中で役立つのが「業務の棚卸」です。
そこで本記事では業務の棚卸の内容やメリット、必要性や進め方について解説します。
業務の棚卸とはどんなものか?
業務の棚卸とは、自社で行っている業務やタスクを洗い出し整理することです。主に洗い出す内容としては作業内容、工数、人員数、費用、作業の種別などで、エクセルシートや専用ツールなどに記載を行い可視化します。
可視化を行い業務の工程や流れを詳細に把握することで、無駄な作業や費用がないかを確認することができます。そのため、業務改善を行うにあたって必要な作業と言えるでしょう。
業務の棚卸の必要性
近年では特に業務の棚卸の必要性が高まってきていますが、その理由としては主に下記の様な原因があります。
原因(1) 働き方改革の推進
これまで日本では膨大な業務量を残業で片付ける傾向にありました。しかし2019年の働き方改革の施行による残業時間の規制、さらには少子高齢化による労働人口減少で、業務効率化の必要性が高まったのです。
そのため、既存の業務やタスクの見直しを行う「業務の棚卸」も注目され、業務改善や効率化の一環として取り組む企業が増えました。
原因(2) DXの推進
AIやIoTなどのデジタル技術を業務に組み込むことで効率化を図り、競争優位性を高めるDX推進の流れも、業務の棚卸が着目される要因となりました。
DX推進のためには、既存業務がどのように行われているか洗い出し、どの部分を自動化・デジタル化するのかを判断しなければなりません。そのため、業務の棚卸を行うことが求められているのです。
やらない理由はない!業務の棚卸のメリットとは?
効率化のために業務の棚卸を行うといっても、時間や労力は掛かります。そんな手間や苦労がある中で、業務の棚卸に取り組むメリットはあるのでしょうか。そこで今度は業務の棚卸のメリットを解説します。
主なメリットとしては下記の様な点があります。
メリット(1) 業務改善できる項目の洗い出しができる
業務の棚卸のメリットとして、改善すべき業務の洗い出しができるという点です。特に業務量が多く従業員に無理が生じていないか、作業工程において無駄な部分はないか、業務上ムラが生じている部分はないかなどを把握することが可能です。
多くの企業で特定の従業員に負担が偏っている、無駄な重複作業があるため余計なコストが掛かっているケースがあります。ぜひ、業務の棚卸で改善項目の洗い出しを行いましょう。
メリット(2) リソース配分を最適化できる
業務の棚卸を行えば、限られた人員リソースを効果的に再配分できます。棚卸で各作業の業務量は正確に把握できますので、最適な作業員の配置も可能となり、限られた人員リソースを有効活用できるのです。
また、棚卸で無駄な作業や非効率な工程を改善すれば、少ない人員でも効率性を高められますので、生産性の向上が可能です。
メリット(3) 属人化のリスクを洗い出せる
業務の棚卸では既存業務の洗い出しで、作業項目や業務フローの可視化を行います。その過程で、これまで担当者しか分からなかった作業方法や業務量も把握できますので、特定の人しか作業できないという属人化のリスクも抽出できます。
担当者しかできなかった作業や業務に関しては、マニュアル化しておくことにより別の従業員が代わりに行うことも可能となります。
具体的な業務の棚卸の方法について
それでは実際に業務の棚卸の方法について解説します。具体的な方法については下記の6つのステップがありますので、手順に沿って棚卸を行ってみて下さい。
ステップ(1) 棚卸実施範囲の決定
まずは棚卸を実施する業務の範囲を決定します。一度にすべての部門や部署、業務の棚卸を行うことは、時間や掛かる労力を考えると非常に困難であると言えます。
そのため、部署や部門といった小さな組織単位での棚卸や、優先したい業務や作業の種類ごとでの棚卸を徐々に進めると良いでしょう。
こうした棚卸業務は、他の通常業務と並行して行うこともあると思います。その場合には通常業務に支障の出ない範囲で棚卸の範囲を決めましょう。
ステップ(2) 棚卸表を作成(項目の決定)
棚卸の範囲を決めましたら、作業を行う担当者に業務内容や作業タスクを記載するための棚卸表を作成していきます。担当者によって記載の仕方が異なると大変ですので、事前に定めた項目を記載するフォーマットを作成しておきましょう。
主に記載してもらった方が良い項目としては、下記の様なものがあります。
● 業務の分類や業務の名称(大項目・中項目・小項目などで分ける)
● 業務に掛かる工数
● 業務を行う頻度や発生するコスト
作成で使うツールは自由ですが、エクセルなどで作っておくと後で編集や修正もしやすいためおすすめです。
ステップ(3) 棚卸の実施
棚卸表ができたら作業担当者に配布を行い、実際に行っている業務を記載してもらいます。前述したように作業担当者は、通常業務と併せて棚卸業務を行うケースが大半ですので、時間・業務量で見て余裕のあるペースで記載を行ってもらいましょう。
ステップ(4) 棚卸した業務のリスト化(集計)
記載してもらった棚卸表は、業務の種類や難易度別などでリスト化・集計していきます。その際に記載漏れしている業務やタスクがないか確認しましょう。
また、大項目・中項目・小項目といった分類をしている場合、業務量が大幅に異なるタスクが、横並びになっていないかもチェックします。
ステップ(5) 担当者へのヒアリング
担当者に記載してもらった棚卸表や業務の種類ごとに分けたリストを基に、疑問点やタスクの記載漏れについてヒアリングを行います。
そして、このステップで属人化している業務や無駄もしくは非効率な作業、業務量的に無理がある作業などを洗い出し、担当者と改善策を検討します。
ステップ(6) 棚卸しは定期的に行う
棚卸により改善策を施行した後も、定期的に棚卸は行っていきます。業務の棚卸はタイミングによって浮き彫りになる課題や問題も様々です。そのため、定期的に起こる課題などもチェックし改善するため、その都度業務の棚卸を行い効率化や業務改善をすると良いでしょう。
また、定期的な棚卸は業務改善の効果が出ているか確認する意味でも効果的です。取り組むスパンなども定めて行ってみて下さい。
業務棚卸後の業務改善に向けた確認ポイント
業務の棚卸が完了したら、実際に業務改善のために必要な施策を検討します。しかし、どのような観点から業務を見直し、改善すれば良いか悩みますよね。そこで、ここでは具体的な業務改善のための確認ポイントを解説します。
主に下記の様な点から業務の改善を検討すると良いでしょう。
ポイント(1) 必要な業務であるか
まずは棚卸した業務のリストを基に、記載された業務が本当に必要であるかを確認します。あまり利用されていない資料の作成、優先度が低い作業、重複している作業などがないか、作業担当者や棚卸リスト作成者と一緒にチェックしましょう。そして必要ないと判断すれば削減も行います。
ポイント(2) 適切な人員配置か
続いて適切な人員配置となっているかも大きな確認ポイントです。既存の業務フロー図などを作成した後、各プロセスにおいて業務量に偏りや過剰な負担が生じていないかをチェックします。
必要であればリソースの再配分を行い、適切な人員配置にしましょう。もし人手が足りなければ外注化の検討も行います。
ポイント(3) 工数対効果は適切か
さらに各プロセスでの作業で掛かっている工数と、その工数から生まれている効果が適切であるかも確認しておく必要があるでしょう。
効果に対してあまりにも工数が掛かりすぎている場合には、作業担当者や業務を統括する担当者と業務改善を検討します。現場の人へのヒアリングも行い進めていきましょう。
ポイント(4) 非効率な状態でないか
上記以外にも、複雑な社内の制度やルールで作業が非効率になっている場合もあります。そのため、社内制度やルールに関しても定期的に見直しを行い、効率が落ちてしまっていないかチェックを行いましょう。
そして非効率な場合には、会社全体として制度やルールの変更を検討します。
業務の棚卸・改善には全社的な取り組みと協力が不可欠!
以上、業務の棚卸の内容やメリット、具体的な進め方や見直しのポイントも解説しました。注意すべきポイントや知っておきたい点も多くありましたね。
業務の棚卸を行い改善を成功させるためには、担当者だけでなく他部署の人や作業関係者との協力や連携が不可欠です。
また、全社的な取り組みも必要となりますので、ぜひ本記事を参考にして業務の棚卸や改善に着手してみてください!