業務改善の効果とは?改善方法やフレームワーク・進め方を紹介

業務改善の効果とは?改善方法やフレームワーク・進め方を紹介

どの業界でも人手不足が深刻化する中、限られた人材と予算の中で業績を上げるために、業務改善に取り組んでいる企業が増えてきています。業務改善に成功すれば、企業の生産性アップや定着率の向上にもつながりますが、なかなか具体的な方法がわからないという方も多いでしょう。

この記事では、業務改善とは何か、得られる効果、業務改善に役立つフレームワーク、注意点などについて詳しく解説していきます。

 

業務改善とは

業務改善とは、業務フローに隠れている「ムリ、ムダ、ムラ」を洗い出し、業務の見直しや改善を進める取り組みのことです。今までの業務が見直されることにより、限られたリソースの中でも、効率的に作業ができるようになります。結果として、会社全体の生産性向上にも繋がり企業の競争力を高めることが可能です。

 

業務改善に取り組むきっかけ

企業が業務改善に取り組むきっかけには、以下のような例があります。

・テレワークの導入
・時短勤務の導入
・人手不足問題
・労働時間の短縮
・コストの削減

新型コロナウイルスが世界的に流行したことにより、リモートワークや時短勤務を導入する企業が増加しました。

また、働き方改革や予算の削減なども企業が業務改善の取り組みを強化するきっかけとなっています。目まぐるしく変化する社会の流れに合わせ、企業も業務の見直しを行っています。

 

業務改善の必要性

日本は深刻な少子高齢化問題に直面しており、今後さらに労働人口が減少していくことが予想されています。業務の改善や見直しを行い、生産性を向上させていくことが現在の企業に求められています。

 

生産性の向上

生産性を向上するためには、業務の見直しや改善は必須だといえるでしょう。企業の生産性が低迷している場合は、業務の中に「ムリ・ムダ・ムラ」があると考えられます。「ムリ・ムダ・ムラ」の例は以下が挙げられます。

・ムリ:実現困難な納期を課され、従業員に過度の負担がかかっている
・ムダ:必要以上に生産し、在庫を大量に抱えている
・ムラ:担当者によって作業方法や品質にもバラつきがみられる

上記のように、見直しが必要な業務を洗い出し、改善していくことが業績の向上にもつながります。さらに、労働環境の改善にもつながるため、社員の満足度向上や定着率アップといった効果も得られるでしょう。

現在の限られた資源で企業全体の生産性を上げるためにも、業務改善は必要な取り組みだといえます。

 

業務の標準化

人手不足が深刻化している現場では、従業員1人当たりにかかる負担が増え、属人的な業務が増えてしまう可能性があります。しかし、業務において特定の誰かに依存しているという状況は、大きなリスクが伴う可能性があるため注意が必要です。

例えば、業務を担当している従業員が、急な休暇が必要になった場合や退職した場合には、業務に対応できる人が他にいないというトラブルが発生します。

また、従業員によって仕事のスピードやクオリティが大幅に変わる場合は、対処が必要です。企業としては、一定の品質を担保し業務効率化するためにも業務の標準化が求められます。

特定の人材に依存する業務を増やさないようにするためにも、業務の改善に取り組むことが必要です。

 

業務改善による効果

業務を改善することにより期待される効果は、主に以下の4つが挙げられます。

・業務の効率化
・業務品質の底上
・コスト削減
・離職リスクの低減

ここでは、それぞれの効果について解説します。

 

業務の効率化

業務改善を行うことは業務の効率化にもつながります。今まで問題視されてこなかった非効率でムダの多い業務が浮き彫りになるでしょう。
これから改善すべき問題や課題がはっきりとわかるため、的確な施策を実行できます。また、適切な業務改善を行うことで、企業全体としても業務を効率化できます。

 

業務品質の底上げ

業務品質の底上げを目指すためには、業務改善が必要です。従業員によって、手順や成果物の品質、作業スピードが大きく異なる場合は、業務をマニュアル化することで一定の品質を保てます。
また、業務の標準化を行えば他の社員に新しい業務を教える際などにもスムーズです。業務品質の底上げは、結果として効率性や生産性の向上にもつながります。

 

コスト削減

業務改善により、時間的ムダや経費的ムダが削減されます。たとえば、ペーパーレス化を行った場合、印刷にかかっていたコピー・インク代・コピー用紙代などを削減可能です。加えて、印刷の手間暇など従業員にかかる負担も削減できるため、作業時間の短縮も期待できます。
このように、業務改善を行うと、経費、人件費、時間的ムダなどコストを削減できます。

 

離職リスクの低減

業務を改善すると離職リスクの低減も期待できます。仕事の成果には関係ない無駄な業務は、社員のモチベーション低下や離職を引き起こす原因です。
このような業務を削減することで、労働時間が少なくなり、社員がコアな業務に集中できる環境を整備できます。そのため、業務改善は、定着率向上の施策としても有効です。

 

業務改善の方法

現在直面している課題を改善するためには、適切な方法を選ぶことが大切です。効率よく業務の改善を進めるためにも、どの方法が最適かをチェックしてみてください。ここでは、業務改善方法についてひとつずつ紹介します。

 

無駄な業務の是正

業務改善の方法として挙げられるのは、無駄な業務をなくすことです。仕事の成果につながりにくい業務やあまり意味のない定例化された業務については、削減を検討すると良いでしょう。
例えば、口頭での報告で済む書類の作成や必要以上に行われている会議などが削減の対象としてあげられます。完全に削減できなくても、これらの業務が減ることで業務効率は向上していくでしょう。

 

業務マニュアルの作成

業務マニュアルの作成は、業務改善につながります。特定の従業員がいないと対応できない業務は、その業務のマニュアル化を検討すると良いでしょう。マニュアルを社内で共有できるため、イレギュラー発生時でも代わりの誰かが対応して、業務を進めることが可能です。

また、業務をマニュアル化することにより、従業員のスキルや経験に依存せず、誰でも一定の品質を生み出せるようになります。そのため、従業員によって仕事の品質が異なる場合も、マニュアル作成は効果的です。

 

作業の自動化

ITツールなどを導入して作業を自動化することにより、生産性を向上できるでしょう。

例えば、経費計算や給与計算など定型化している業務は自動化できます。今まで、人が入力して計算していたものが自動でできるようになるため、人的ミスを削減可能です。さらに、余った時間を他の業務に当てられるため、生産性の向上にもつながります。

しかし、ツールの導入はコストや時間がかかるケースが多いです。失敗しないためにも自社にあったシステムを導入していきましょう。

 

業務のアウトソーシング

業務のアウトソーシングは業務改善の方法のうちのひとつです。アウトソーシングとは、社内の業務を外部機関に委託することをいいます。

例えば、データ入力などの事務業務やコールセンターなど、定型化している業務はアウトソーシングを検討すると良いでしょう。外注する費用はかかってしまいますが、その分社員が重要な仕事に時間を有効活用できるため、プラスに働くといえます。

すべての業務を社内で対応するのが難しい場合は、アウトソーシングすることで業務の改善がみられます。

 

業務担当の見直し

既存の業務の改善方法を検討する際は、業務担当を見直しましょう。業務において、得意不得意は一人ひとり異なります。

例えば、事務作業が苦手な従業員に資料の作成を頼むよりも、事務作業を日頃から担当している従業員に任せた方が、より早く効率的に仕事を進められるでしょう。

このように、社員の特性をふまえて業務を割り振ることで企業の生産性を高めることが可能です。業務担当の見直しは業務改善に効果的な手段の一つといえます。

 

業務改善の進め方

これまで業務改善がどういうものなのかや、効果、方法について紹介しました。では、実際に業務改善を行う際はどのような手順で進めれば良いのでしょうか。業務改善の進め方を5つステップに分けて紹介していきます。

 

業務の可視化

まずは、業務の可視化を行う必要があります。業務の可視化とは、業務の全体像を的確に把握することを指します。業務プロセスにおいて、必要なコスト、工数、作業時間などを具体的に見える化します。
これらの情報を図などで視覚化してもわかりやすいでしょう。従業員にヒアリングすることで、現場の状況をより細部まで把握することが可能です。

 

課題整理、改善目標を設定

業務の可視化を行った後は、洗い出した課題を整理し、改善の目標を立てましょう。一度に全ての課題を解決しようとした場合、従業員の負担が増え、逆に効率や生産性が落ちてしまう可能性が考えられます。
そのため、課題の改善にかかる工数や時間、効果などを考慮しながら、優先順位を設定することが必要です。

 

実行計画の策定

改善目標を設定したら、実際にどのように改善を実行するか計画することが大切です。一つひとつの業務に対する改善計画だけでなく、全体的な計画を立てる必要があります。

最終的な改善目標と達成するまでに何をすれば良いかが明確になるため、途中で本来の目的からズレてしまうこともありません。また、計画を立てたら、それらを後でどのように評価していくかの基準も決めておきましょう。

その都度振り返りをした時に、最適な改善方法がわかり軌道修正もできるため、評価方法もしっかり決めておくことが必要です。

 

計画の実施と定着

次に、改善計画に基づいた施策を行っていきましょう。計画を進めていく際には、いつまでに行うのかなど、期間を決めて管理することが大切です。
計画の実施には現場の協力は必要不可欠だといえるでしょう。事前に従業員に目的や目標を共有しながら進めていくとスムーズです。

また、改善で期待していた効果をみられた場合には、現場に定着させる必要があります。繰り返し施策を実施することで、企業全体としてのプラスの効果も得られるでしょう。

 

効果測定

施策を行った後は、期間を定めて効果を測定することが大切です。効果を検証しなければ、効果的な業務改善が行えているかどうかがわかりません。効果が得られていない場合には、そのまま計画を進めるのではなく、改善を続ける必要があります。

また、効果測定の際にはKPIを用いると良いでしょう。KPIとは、業務のパフォーマンスを計測するための評価指標のことです。KPIと比較して効果を測定することにより、改善策がどれだけ進んでいるかが明確にわかります。

 

業務改善に使えるフレームワーク

業務改善に活用できるフレームワークは主に「ECRS(イクルス)」「PDCA」「ロジックツリー」「BPMN」「KPT」「バリューチェーン分析」「MECE」「マンダラート」「4象限マトリクス」「5W2H」があります。まずは各フレームワークについて解説していきます。

 

ECRS(イクルス)

ECRS(イクルス)は、業務改善を実施する際の視点や順番を示したフレームワークです。
Eliminate(排除)Combine(結合と分離)Rearrange(入替えと代替)Simplify(簡素化)の頭文字をとったもので、それぞれの意味は以下の通りです。

・Eliminate(排除):無駄な業務をなくす
・Combine(結合と分離):似ている業務を一つにまとめるもしくは各工程を分離させる。
・Rearrange(入替えと代替):作業順序、場所、担当者を再配置する
・Simplify(簡素化):作業を自動化もしくはパターン化する。

上から順番に施策を行うことにより、効率的に業務改善を進められます。

 

PDCA

PDCAとは、業務の効率化を進め、生産性をあげていくためによく使われるフレームワークです。

・Plan(計画):計画を立てる
・Do(実行):計画に沿って施策を実行する
・Check(確認):目標や計画が達成できているかを確認する
・Action(改善):評価をもとに計画を改善する

Plan(計画)から順番に行い、Action(改善)の後はまたPに戻るサイクルです。
これらのサイクルを繰り返すことにより、より精度の高い改善を実施できるようになります。

 

ロジックツリー

ロジックツリーとは、さまざまな角度から問題の原因を分析する際に使用するフレームワークです。一つの問題をいくつかの小さな要素に分解し、それぞれの要素について原因を細かく深堀りします。ロジックツリーを用いると、根本的な課題も浮き彫りになるため、本質的な問題解決ができるでしょう。

また、ロジックツリーを作成すると問題の全体像が見える化されます。広い視野で全体を把握できるため、課題解決の優先順位をつけることが可能です。

 

BPMN

BPMNとは、業務の流れを図式化することで改善点を見つけ出すフレームワークです。業務の開始から終了までの業務の流れの中で、誰がどのような業務を担当しているかを図形や矢印などを用いてまとめます。

1つのプロジェクトに複数のチームが関わっているなど複雑性が高い業務も、一連の流れが可視化されます。そのため、無駄な作業の解明がしやすく、作業も効率よく進められるようになるでしょう。

 

KPT

KPTは、業務改善を行う際の振り返りの指針として使われるフレームワークです。Keep(継続)Problem(問題)Try(挑戦)の頭文字を取ったもので、以下の点を振り返り、改善していきます。

・Keep:成果がでていて継続する点
・Problem:問題点、解決すべき点
・Try:改善に向けて次に取り組む点

KPTを日常的に用いると、課題の早期発見が可能です。問題が大きくなる前に問題を解決できるため、精度の高い改善を続けられるでしょう。

 

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、業務フロー全体の把握に役立つフレームワークです。まず、企業の活動を以下の2通りに分類します。

・主活動:購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービス
・支援活動:全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達活動

バリューチェーン分析を活用することで、どの機能で価値が生み出されているか、改善が必要なプロセスはどこかなどを正確に把握できます。

 

MECE

MECEとは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive 」の頭文字を取ったもので、「重複せず、全体として漏れがないこと」を表します。
業務改善を進める際にMECEを活用すると、複雑に見える問題も細部まで分析でき、重複や漏れの排除が可能です。

現在の仕事の流れに隠れていたムダを取り除けるため、業務の効率化や生産性の向上も期待できるでしょう。

 

マンダラート

マンダラートとは、目標の設定や情報の分析に役立つフレームワークです。まず、3×3の9マスの中心にテーマを書き出します。そして、テーマから連想されるアイデアを順に記入し、合計81個のマスを埋めます。

マンダラートを作成する際には、多数のアイデアが必要です。複数の情報を書き出していく中で、問題の原因や因果関係にも気付けるでしょう。

81マスに記載したアイデアを全体的に見直すことで、新たな目標や改善すべき点を発見できます。

 

4象限マトリクス

4象限マトリクスは、物事の立ち位置を正しく判断する際に役立つフレームワークです。縦と横の2軸を設定し、タスクを4つに振り分けていきます。

例えば、業務の優先順位を設定する際には、「重要度」と「緊急度」の2軸を置き、それぞれ「重要度が高い」「重要度が低い」「緊急度が高い」「緊急度が低い」の4項目に分類してみましょう。

業務の分類を行うと優先順位が視覚的にもわかるため、業務改善を進めるのに役立ちます。

 

5W2H

5W2Hは、複数ある情報やタスクの整理に役立ちます。以下の7点に着目し、分析を行いましょう。

・When:いつ行うか(時間、時期、期限など)
・Where:どこで行うか(場所、方向、経路など)
・Who :誰が行っているか(役割や実施体制など)
・What:何を行うか(対象、範囲、機能など)
・Why:なぜ必要か(経緯、目的、理由、成果など)
・How:どのように行うか(方法、手段、手順)
・How Much / How Many:いくら必要か、いくつ必要か(コスト、予算、数量など)

これら観点を意識することで、目標達成までの具体的な計画が立てやすくなります。

 

業務改善のポイントと注意点

効果的に業務を改善するためには、いくつか押さえておきたい点があります。主に下記のようなポイントや注意点があるため、業務改善を進める際にはしっかりと理解しておくことが大切です。

 

目的を明確にする

業務フローを改善する際には、具体的な目標を設定することが大切です。目標がないと、業務改善が順調に進んでいるかどうかの判断ができません。効果が出ていたとしても、最終的な目標に繋がっていなければ意味がありません。

また、何を目標にするかによっても改善内容の優先順位は変わってしまいます。一度にすべての業務を改善することは難しいため、目標に沿って計画し施策を実行していく必要があります。

 

現場の意見を聞きながらすすめる

業務改善をスムーズに進めるためにも、現場の従業員の意見を考慮することは重要です。実際に業務改善を進めるのは現場であり、現場に動いてもらわない限りは施策を円滑に進められません。現場の理解を得られないまま実施した場合、従業員のモチベーションの低下に繋がったり、生産性が落ちてしまったりなど、逆効果となる可能性があります。

自分ごととして改善に取り組んでもらうためには、現場の従業員とこまめに目標や情報を共有し、積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。

 

短期的な結果を求めすぎない

業務改善を行い、効果を実感するまでには時間がかかります。改善の効果は、一定期間経った後に検証してみなければわかりません。

また、たとえ短期的に効果が出ていたとしても、長期的な効果や目標達成にはつながっていないということも十分に考えられます。短期的な結果を求めすぎてしまうと本来の目標を失ってしまいます。

改善には時間がかかるということを理解した上で改善を繰り返していくことが大切です。

 

まとめ

日々の業務には、普段気づいていない非効率的な作業が隠れている場合があります。課題をそのまま放置してしまうと、生産性が低迷してしまう可能性があるため、早めに対処することが必要です。

また、人手不足や働き方改革など社会の流れに対応したい方にとっても、業務改善は必須で取り組みたい事項だと言えるでしょう。

今回紹介した、改善の進め方やフレームワーク、注意点を理解した上で自社に合った施策を実施してみてください。

 

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