人材育成に使えるフレームワークを解説!生かすコツや取り入れる手順

会社において人材育成は欠かせない課題です。しかし「どうやって人材育成を行ったらいいのかわからない」と思っている方も多いでしょう。
人材育成において、フレームワークは効率的かつ一貫性のある人材の育成が可能となる非常に有効なツールであり、多くの企業が取り入れています。
この記事ではフレームワークがどのようなものなのかをはじめ、フレームワークを生かすコツや取り入れる手順について詳しく解説します。
人材育成に利用できるフレームワーク
人材育成に利用できるフレームワークは主に「HPI」「SMARTの法則」「カッツ理論」「カークパトリックモデル」「70:20:10の法則」「氷山モデル」「思考の6段階モデル」があります。
まずは各フレームワークについて解説していきます。
HPI
HPI(Human Performance improvement)は、組織の課題を人材の視点から考えて解決していく方法のことです。
本来あるべき人材の姿と現状を洗い出し、目標や課題達成のために生じているギャップの原因を特定して解決策の立案、実行、評価を行います。主に経営目標達成のためにどのようなスキル習得が必要かを分析し、育成や指導実施がHPIにあたります。
HPIを進めるためのステップは6つに分かれています。
・パフォーマンス分析:パフォーマンスを分析して、現実とのギャップを洗い出す
・原因分析:ギャップが生じる原因を分析
・施策立案:ギャップの要因を解決するための施策を設定
・実行:設定した施策を実行
・評価:実施した施策を評価する
HPIの大きな特徴は、人事的な課題でも経営計画に連結している点です。
SMARTの法則
SMARTの法則は、目標設定の手法の1つです。目標設定に必要な5つの要素である「Specific」「Measurable」「Achievable」「Relevant」「Time-bound」の頭文字をとって「SMART」と呼ばれています。
・Specific (明確性):設定した目標が明確で具体的か
・Measurable(計量性):進捗率や成果が数値で測定可能か
・Achievable(達成可能性):現実的で達成可能な目標か
・Relevant(関連性):目標達成によりどんな成果がもたらされるか
・Time-bound(期限):具体的な期限を設けているか
SMARTの法則によって、目標を少しずつレベルアップしながら人材を育成することが可能となります。目標の設定から達成を繰り返すことで結果的に大きな目標達成に繋がるとともに、従業員のモチベーションアップにも繋がります。
カッツ理論
カッツ理論は、マネージャー(管理職)の役職とビジネススキルの関係性について述べられた理論です。1955年にアメリカの経済学者ロバート・カッツによって提唱されました。
カッツ理論ではマネージャー層を3つに分類しています。
・ロワーマネジメント(下級管理職):店長、プロジェクトリーダーなど
・ミドルマネジメント(中間管理職):部長、課長、主任など主任など
・トップマネジメント(経営者層):社長、CEO、役員など
さらにカッツ理論では管理職に必要なスキルが3つ提唱されています。
・テクニカルスキル(業務遂行能力):業務を遂行するためのスキルや知識
・ヒューマンスキル(対人関係能力):他者とのコミュニケーションや良好な人間関係の構築
・コンセプチュアルスキル(概念化能力):物事の本質を見極め、考える能力
各層に必要なスキルを提示することで人材育成の方針が決定しやすくなります。
カークパトリックモデル
カークパトリックモデルは、教育の効果を「反応」「学習」「行動」「結果」の4段階で評価する方法のことです。
1975年にアメリカの経済学者、カークパトリック氏によって提唱されました。
・レベル1 Reaction(反応):研修に対する反応、満足度
・レベル2 Learning(学習):研修による受講者のスキル・知識の獲得度合い
・レベル3 Behavior(行動):研修受講による行動変容
・レベル4 Result(結果):研修受講による目標の達成具合
多くの企業ではレベル1,2の評価を研修当日にアンケートやテストなどを実施して評価を行います。レベル3,4に関しては研修終了後に面談やヒアリングを通じて長期的にモニタリング・評価していく必要があります。
70:20:10の法則
70:20:10の法則はロミンガーの法則とも呼ばれていて、アメリカのロミンガー社が経営者層に対してリーダーシップを発揮するために役立った要素の調査を行った結果から生まれた理論です。
調査結果は以下の通りです。
・業務経験(70%):業務を通して得た知識や経験
・薫陶(20%):上司からのアドバイスや指導
・研修(10%):研修や読書から得た知識
調査結果を見てもわかる通り、経営者にもなるほどのリーダーシップ発揮のために最も重要なのは「経験」です。新人のうちからOJTを通して上司からのアドバイスや指導をもとにできるだけ多くの業務を経験し、経験値を積んでいくことが重要になります。
氷山モデル
氷山モデルは、物事の全体像を捉えるフレームワークです。「氷山の一角」という言葉があるように、海面に突き出し表面に見えているのはほんの一部であり、大部分は海中に埋まっているということを表しています。
氷山モデルでは、表面に見えている一部分だけでなく、海中に埋まっている残りの大部分も合わせて全体的に物事をとらえ、根本的な課題解決に向けて動いていきます。フレームワークにおいては、氷山モデルを階層的に表していることが特徴です。
上から大まかに「行動→知識スキル→マインド」となっており、我々が普段認識しているのは表面に見えるその人の行動であり、その行動の前提として知識・スキルやマインドが必要となります。
思考の6段階モデル
思考の6段階モデルは思考を6段階に分類し、教育において各段階の能力を高めることが必要であるとする考え方です。
教育学者のベンジャミン・ブルーム博士が提唱しました。
・レベル1 記憶:事実、方法、言葉などを知っているか
・レベル2 理解:内容を解釈し、説明や言い換えができるか
・レベル3 応用:習得した知識を他の場面でも活用できるか
・レベル4 分析:全体像を把握し、各要素の分類や説明ができるか
・レベル5 評価:内容を分析し、批評できるか
・レベル6 創造:レベル1~5を活用して新たなものを生み出せるか
この6段階は人が成長するための基本であり、この6段階に乗っ取って教育を行うことで、人材を確実かつ効率的に成長させることができます。
人材育成でフレームワークを生かすコツ
フレームワークをうまく生かすためのポイントは4つあります。各ポイントを踏まえてフレームワークを実施することでより効果を発揮し、会社にとってより良い結果が生まれるでしょう。
次はフレームワークを生かすコツについて解説します。
フレームワークは目的にあったものを使う
フレームワークを活かすためのポイント1つ目は「目的に合ったものを使う」です。実際に人材教育を行う際に、新人向けの教育をマネージャー層に実施しても意味がありません。誰に対してどういった目的で行うかを明確化しておかないとせっかくの教育の意味がなくなってしまいます。
どのフレームワークを行うかは以下を考慮しましょう。
・会社の経営理念やビジョン
・経営目標
・どんな人材に行うか
・何を目的として行うか
大切なのは会社の長期的な目標を踏まえた教育を実施することであり、そのためには経営者層も巻き込んでフレームワークを実施していく必要があります。
実践を繰り返す
ポイント2つ目は「実践を繰り返す」ことです。
人材育成におけるフレームワークでは、相手が人間なので想定外の事態が起こることもあり、いくら念入りに結果やビジョンを想定しても思い通りの結果になるとは限りません。
そのため、なるべく早い段階でフレームワークを実施し、実践を繰り返していきましょう。
また、せっかくフレームワークを実践しても結果に繋がらなければ意味がありませんので、実践していく中で改善点を都度見つけていき、改善していくことが大切です。都度改善点を見つけて改善することで早い段階での修正や方針転換が可能となります。
状況に合わせて柔軟に対応
ポイント3つ目は「状況に合わせて柔軟な対応をする」です。
フレームワークを実施することは大切ですが、必ずしも型にはまり過ぎる必要はありません。フレームワークばかりを念頭に置いてしまうと思考パターンを押し付けてしまうことにもなりかねないため、自社の目標や状況、業務内容に応じて柔軟に形をアレンジしていくことでよりフレームワークを上手く活かすことができます。
しかし、結果が出ていないのに次々と教育を実施したり、会社の都合で不必要なアレンジを行ってしまうと改悪となる可能性もあるので注意が必要です。フレームワークを実施する根底にある会社の経営目標やビジョンをしっかりと確認しながら教育を実施していきましょう。
階層や業務内容で使い分ける
ポイント4つ目は「階層や業務内容で使い分ける」です。
フレームワークの最終目標は自社の経営目標達成ですが、各業務において実務的な視点からみると人材育成の目標は「階層」や「業務内容」で異なります。
そのため、フレームワークを実施する際は一概に全員同じ教育を行うのではなく、「従業員」「中間管理職」「経営者層」などに分けて行い、各階層に求められている知識やスキル、目標を踏まえたフレームワークを選択する必要があります。
人材育成にフレームワークを使うメリット
フレームワークについて説明してきましたが、フレームワークのメリットは何?と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
次は人材育成にフレームワークを使うメリットについてご紹介します。
育成方法が確立できる
フレームワークを使うと、人材の育成方法を確立しやすくなります。人材育成はどのように行うかが非常に重要です。
しかし、人材育成の方法が重要な分、育成方法の計画が最も難しいポイントです。フレームワークを使うことにより育成の枠組みが作られるため、自然と今まで社内になかった育成方法を確立することができます。
人材育成が効率的に行える
フレームワークを活用することで、人材育成を効率的に行うことができます。フレームワークによって育成方法の枠組みが示されている分、1からの計画立案が不要になるとともに、ある程度の手順などが示されているため計画的かつ効率的な育成が可能です。
育成が効率化すると、育成に費やす時間の短縮にも繋がるため社内全体の業務も効率化していきます。
一貫性のある育成ができる
フレームワークを使うことにより、一貫性のある人材を育成することが可能です。もしもフレームワークを使わずに人材育成を行った場合、教育を行う人によって内容や方法、進捗具合が異なる場合があり、育成される側も個々のレベルが変わってきてしまいます。
フレームワークを使うことで最初から最後まで同じ目的・目標で進められるため、教育者側のスキルなどの影響を受けずに、一貫性のある育成が可能となります。
人材育成にフレームワークを使う時の注意点
人材育成にフレームワークを使うメリットを3点ご紹介しましたが、一方で注意点もいくつかあります。次はフレームワークを使うときの注意点についてご紹介します。
柔軟性の低下
フレームワークは枠組みができているため手順や方法が示されており、その通りに育成を行うことで一貫性を持たせることができますが、それがデメリットとなる場合もあります。フレームワークに頼りすぎたり、遵守しすぎることで柔軟性が低下してしまうので注意が必要です。
経営目標や社内の状況に応じて柔軟性を持った育成を行うことが大切です。
経営目標に合わせた調整
先ほど、フレームワークに頼りすぎてはいけないとお話ししました。フレームワークに頼りすぎてしまうと目標や社内の状況変化に対応できなくなる場合があります。会社の目標が変われば当然育てるべき人材も変化し、それに伴って育成方法も随時換えていく必要があります。
そのため、常に同じフレームワークを実施すればいいのではなく、目標変更時のみならず定期的な育成方法の見直しと改善を行っていくことが大切です。
結果が出るまでは時間がかかる
フレームワークだけでなく、人材育成自体結果が出るまでに時間がかかるため育成する側に急速な成長を求めないことが重要です。
いくらフレームワークで人材育成の枠組みができていても、育成される側も人間なので得意不得意や性格は人それぞれ違います。早く育成したいからといって業務を与えすぎたり、逆にあまりにもゆっくり育成を行ってしまうと仕事自体が嫌になってしまうことがあります。
人材育成は結果が出るのに時間がかかることを前提に行っていきましょう。
人材育成にフレームワークを取り入れる手順
これまでフレームワークがどういうものか、メリットや注意点についてご紹介しました。では、実際に人材育成にフレームワークを取り入れる手順を6つの段階に分けてご紹介していきます。
どれか1つの段階でも欠けると十分な成果が得られない可能性があるので各段階のポイントをしっかりと認識することが大切です。
育成状況の把握
フレームワークを取り入れるための第1段階として、まずは現場における育成状況の把握を行いましょう。
現在の育成状況を把握せずに育成を進めてしまうと、育成する側とされる側の相違が生まれてしまいお互いにとって負担となるなど、フレームワークの効果が十分に発揮されなくなってしまいます。
そのため、現在の育成状況を現場全体から個人まで細かく丁寧に把握してからフレームワークを取り入れるのがポイントです。
経営目標の確認
第2段階として経営目標の確認を行います。フレームワークを取り入れて人材育成を行うことの最終目標は経営目標の達成です。先述のとおり、経営目標ごとに育てるべき人材は異なり、経営目標と外れた人材育成を行ってしまうとせっかくの人材育成自体意味がなくなります。
そのため、教育を行う側は会社の経営目標を再度確認し、会社にとって必要なのはどのような人材なのかをきちんと確認する必要があります。
また、育成される側も経営目標を把握し、ビジョンや目標を立てていくことが大切です。
採用するフレームワークの決定
第3段階として採用するフレームワークを決定します。第2段階で経営目標の確認を行うところで、会社にどんな人材が必要なのかを明確にしました。
例えば、研修を通じて人材育成を行う場合はカークパトリックモデルを利用したり、実際の業務を通じた育成(OJT)を重視する場合は70:20:10の法則を使います。
このように会社の経営目標に沿ったフレームワークを選択し、最終的に経営目標を達成できるような人材を育成していきます。
人材育成計画の作成
第4段階として、採用するフレームワークを決定したら人材育成の計画を作成します。人材育成を行うといってもどのように行うかの計画がないと意味がありません。
ある程度、いつまでに目標を達成するか、誰がどのスキルを身に着けるかなどの具体的な人材計画を立案し、進捗状況をきちんと管理する必要があります。人材計画を作成しないと期日までにスキルが身についているかもわかりません。
期限内に育成を成功させ、最終的な目標を達成するためにも人材育成の計画は重要です。
各所との合意形成
第5段階として人材育成の計画を作成したら現場の管理職や関係各所との合意を形成します。現場や個人だけで計画を決めてしまっては、内容の不足や改善点を見つけることが困難です。
管理職や経営者層も含んだ関係各所と人材育成の計画を共有することにより、会社全体で人材育成の経過や進捗について把握できるとともに「これを取り入れたほうがいいのではないか」「ここを改善したほうがいい」などの広い視野での計画が可能となります。
人材育成の開始
第6段階、人材育成の計画に関係各所が合意したらいよいよ人材育成を開始します。
人材育成を開始したら、都度記録を付けるとともに定期的な計画の見直しと改善をすることが大切です。記録をすることで進捗度合いを把握でき、トレーニングの制度が高まるとともに次回までの目標を立てる際に役立ちます。
また、定期的に計画の見直しと改善を行うことで進捗の遅れや計画と現状のギャップに気づきやすくなり、早めの改善が可能となります。
まとめ
フレームワークの種類やメリット、注意点、手段などについてご紹介しました。フレームワークは人材育成を行うのに非常に便利なツールであり、うまく利用すれば効率的かつ一貫性のある人材の育成が可能となります。
人材育成においてフレームワークを行う際のポイントとなるのは、経営目標の確認と人材計画の立案です。会社全体で経営目標を確認するとともに、計画を立案していきます。
今回お話ししたポイントを参考に、ぜひフレームワークを取り入れてみてはいかがでしょうか。