工数管理のやり方完全ガイド|5ステップの手順と定着させるコツ、ツール比較まで解説
「プロジェクトの採算が合っているのかわからない」
「特定のメンバーにばかり負荷が偏り、現場が疲弊している」
「工数管理を導入してみたものの、入力が面倒で形骸化してしまった」
マネジメントの現場で、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
工数管理は、プロジェクトの収支を改善し、チームの生産性を高めるために不可欠な要素です。しかし、正しい「やり方」を知らなければ、現場に「ただの事務作業」として嫌われ、正確なデータが集まらないまま失敗に終わってしまいます。
この記事では、工数管理を成功させるための具体的な5つのステップを軸に、以下の内容を徹底解説します。
・なぜ工数管理が必要なのか?(業務効率化などのメリット)
・現場が「めんどくさい」と言わないための定着のコツ
・エクセルと専用ツール、自社に最適なのはどっち?
この記事を読み終える頃には、自社に合った工数管理の運用イメージが明確になり、明日から具体的な改善アクションを起こせるようになります。
1. 工数管理とは?
まず初めに、「工数管理」という言葉の定義を正しく整理しておきましょう。
工数とは、ある作業を完了させるために必要な作業量を表す単位です。一般的に「人数 × 時間」で計算されます。
人日(にんにち): 1人が1日(通常8時間)働いた時の作業量
人月(にんげつ): 1人が1ヶ月働いた時の作業量
例えば、あるプロジェクトに「5人月」かかると予測される場合、1人で取り組めば5ヶ月、5人で取り組めば1ヶ月で終わる計算になります。
「工数管理」の真の目的
工数管理とは、単に「誰が何時間働いたか」を記録することではありません。
その本質的な目的は、「どの業務に、どれだけのコスト(時間)を費やしたか」を可視化し、プロジェクトの収支改善や生産性の向上に繋げることにあります。
労働時間の集計は「勤怠管理」の役割ですが、その中身(内訳)を細かく把握するのが「工数管理」の役割です。
2. なぜ工数管理が必要なのか?得られる4つのメリット
工数管理を導入・改善することで、組織には主に4つの大きなメリットがもたらされます。
(1)プロジェクト収支の適正化
プロジェクトが赤字になる最大の要因は、「想定以上の時間がかかっていることに気づかないこと」です。工数管理を行うことで、人件費という最大のコストをリアルタイムで把握できます。予算(予定工数)と実績を比較し、乖離が起き始めた時点で対策を打てるようになるため、不測 of 赤字転落を防ぐことが可能です。
(2)リソース配置の最適化
チーム内の「誰が、どのプロジェクトで、どれだけ忙しいのか」を可視化できます。
特定のメンバーに負荷が集中している場合、工数データがあれば客観的な根拠に基づいて業務を分散させることができます。これにより、メンバーの過度な残業やメンタル不調を未然に防ぎ、健全なチーム運営が可能になります。
(3)業務効率化の促進
「どの作業にどれだけの時間がかかっているか」がわかると、改善すべきボトルネックが見えてきます。
例えば、「会議の時間が想定以上に長い」「単純な事務作業にエンジニアの工数が奪われている」といった実態が浮き彫りになれば、会議の効率化 or 外部委託、ツールの導入といった具体的な効率化アクションを検討できるようになります。
(4)見積もり精度の向上
新しいプロジェクトを計画する際、「なんとなく」で見積もりを立てていませんか?
過去の類似プロジェクトの正確な実績データがあれば、「この規模のシステム開発には、これくらいの工数が必要だ」という根拠のある見積もりが可能になります。結果として、実現不可能な納期を設定したり、安すぎる価格で受注したりといったリスクを最小限に抑えられます。
3. 【実践】工数管理の正しいやり方 5ステップ
工数管理を形骸化させず、意味のあるデータとして活用するためには、以下の5つの手順を踏むことが重要です。
Step 1:管理する目的を明確にし、共有する
「なぜ工数を入れる必要があるのか」が不明確なまま始めると、現場は「監視されている」と感じて反発します。
NG: 「とりあえず時間を計ってください」
OK: 「現場の残業を減らすためのボトルネックを探したい」「プロジェクトの赤字を防いで賞与原資を確保したい」
このように、管理の目的をポジティブに共有することが、協力的な姿勢を引き出す第一歩です。
Step 2:管理単位(粒度)を決定する
工数を「どのくらい細かく分けるか」を決めます。細かすぎると入力の負担が増え、粗すぎると分析の役に立ちません。
悪い例: 「プログラミング(A氏)」「プログラミング(B氏)」など、人ごとに分けるだけで作業内容が不明。
良い例: 「要件定義」「設計」「実装」「テスト」など、工程単位で計測
まずは、1つの作業が「1〜4時間」程度に収まる粒度でカテゴリ分けをするのがおすすめです。
Step 3:入力ルールを策定する
データのばらつきを防ぐため、チーム全員が守るべき共通のルールを作ります。
・入力のタイミング
原則として「その日のうちに」入力する。週末にまとめて入力すると、記憶が曖昧になりデータの信頼性が著しく低下します。
・最小単位
15分単位、30分単位など。
・移動や会議の扱い
プロジェクトに関連する移動時間や会議を、どのプロジェクトに計上するかを統一します。
Step 4:計測・記録する(ツール・手法の選択)
策定したルールに基づき、実際に記録を開始します。手法は大きく分けて3つあります。
・エクセル、スプレッドシート: 初期コストゼロ。自由度が高い。
・チャットツール連携: SlackやTeamsからコマンドで入力。入力漏れを防ぎやすい。
・専用工数管理ツール: ストップウォッチ機能や自動集計レポートが充実。
自社の規模や予算に合わせて、「最も入力の心理的ハードルが低いもの」を選びましょう。
Step 5:分析を行い、改善アクションにつなげる
記録するだけで終わってしまうのが、工数管理で最も多い失敗です。週に一度、あるいはプロジェクトの節目で「予定と実績の比較」を行いましょう。
・乖離が大きい作業はどれか?
・なぜ時間がかかったのか?(個人のスキルの問題か、要件の不明確さか)
この分析結果を現場にフィードバックし、次回の計画や業務プロセスの改善に活かすことで、初めて工数管理は価値を持ちます。
4. 【比較】エクセル vs 専用ツール、どちらを選ぶべき?
工数管理を始める際、多くの企業が悩むのが「エクセル(スプレッドシート)で行うか、専用ツールを導入するか」という点です。それぞれの特徴を比較表にまとめました。
| 比較項目 | エクセル・スプレッドシート | 専用工数管理ツール |
| 初期コスト | 無料(導入済みの場合) | 有料(月額数百円〜/人) |
| 導入の容易さ | 誰でもすぐに使い始められる | 初期設定や操作の学習が必要 |
| 入力のしやすさ | セルへの手入力が手間に感じやすい | ワンクリック入力やスマホ対応が充実 |
| 集計・分析 | 関数やマクロによる手動集計が必要 | 自動でレポートやグラフが生成される |
| データ精度 | 入力漏れや誤消去が起きやすい | 入力忘れ防止アラートなどがある |
エクセル・スプレッドシートが向いているケース
専用ツールの導入を検討する前に、まずはエクセルやスプレッドシートで十分に要件を満たせるケースを具体的に解説します。
- ・チーム人数が5名以下の小規模組織
- ・管理項目が少なく、シンプルな運用で十分な場合
- ・とにかくコストをかけずにスモールスタートしたい場合
専用ツールが向いているケース
続いて、専用ツールの導入を検討すべき、具体的なケースをご紹介します。
- ・10名以上の中・大規模組織
- ・複数のプロジェクトが並行しており、集計に時間がかかっている場合
- ・リアルタイムで正確な収支・稼働率を把握し、経営判断に活かしたい場合
結論として、 最初はエクセルで運用してみて、集計コストが無視できなくなったり、現場の入力漏れが目立ったりするようになったタイミングで専用ツールへ移行するのがスムーズです。
5. 現場が「めんどくさい」と言わない!工数管理を定着させる3つのコツ
工数管理の導入で最大の壁となるのが、現場スタッフからの「入力がめんどくさい」という反発です。この壁を乗り越え、運用を定着させるための3つのコツを紹介します。
(1)入力の心理的・物理的ハードルを極限まで下げる
入力作業に毎日10分以上かかるようでは、定着は望めません。
- ・ワンクリックで入力完了: 専用ツールのタイマー機能や、前日の内容をコピーできる機能を活用する。
- ・スマホ対応: 移動中や隙間時間にパッと入力できるようにする。
- ・カレンダー連携: Googleカレンダーなどの予定をそのまま工数として取り込める仕組みを整える。「仕事のついでに終わる」レベルまで、手軽さを追求しましょう。
(2)管理のメリットを現場に還元する
現場が最も嫌うのは「データを取られるだけで、自分たちには何も返ってこない」状況です。
- ・業務負荷の是正: 「工数データを見て、Aさんの負荷が高すぎるので業務を分散させます」といった具体的なアクションを見せる。
- ・無駄な会議の削減: 「会議工数が多すぎるので、来週から定例を30分短縮します」といった改善を即座に行う。「工数を入れることで、自分たちの仕事が楽になる・働きやすくなる」と実感してもらうことが重要です。
(3)最初から100%の正確性を求めない
最初から1分単位の正確な記録を求めると、現場は疲弊し、最悪の場合は「適当な数字」を入力し始めます。
- ・8割の精度でよしとする: 最初は「大まかにどの案件に何時間使ったか」がわかれば合格、というスタンスで始めましょう。
- ・「不明」枠を認める: どうしても分類できない細かな作業(メール返信、チャット確認など)を計上できる「共通業務」枠を設けると、入力のストレスが軽減されます。
6. 工数管理でよくある失敗例と対策
工数管理を導入しても効果が出ない場合、多くは共通の「失敗パターン」に陥っています。
失敗1:入力が「形骸化」し、適当な数字が並ぶ
【原因】 入力する目的が共有されておらず、現場が「管理されるための作業」と感じている。
【対策】 「【実践】工数管理の正しいやり方 5ステップ」のStep 1で述べたように、目的を再共有しましょう。また、週末にまとめて入力させず、毎日入力する習慣を徹底させることがデータの信頼性を守る唯一の方法です。
失敗2:データを集計するだけで「分析・活用」していない
【原因】 管理者側が「記録させること」をゴールにしてしまっている。
【対策】 月に一度、必ず実績を振り返る時間を設けましょう。予定と実績のズレを特定し、「なぜズレたのか」を現場と議論することで、初めて生産性向上のヒントが見つかります。
失敗3:現場にフィードバックがない
【原因】 集計したデータが管理職の間だけで止まっており、現場に還元されていない。
【対策】 工数データに基づいて「この工程は効率化したので、来月は余裕を持ったスケジュールにします」といった、現場に利益のあるフィードバックを積極的に行いましょう。
失敗4:最初から「完璧」を求めすぎる
【原因】 1分単位の計測や、複雑すぎる作業分類を設定している。
【対策】 最初は「どのプロジェクトに何時間使ったか」という大枠から始め、運用に慣れてから徐々に詳細な工程に分けていく「スモールスタート」が鉄則です。
7. 【自動化ツール】Qaseeのご紹介:工数入力の負担をゼロに
工数管理の最大の課題である「現場の入力負担」を解決するために、PCの利用状況から業務時間を自動で取得し、工数を算出するツール「Qasee」をご紹介します。
Qaseeの主な特徴
| 特徴 | 詳細 |
| 自動工数取得 | 従業員のPC利用状況(使用したアプリ、時間など)を自動で取得。手動の日報や入力作業を不要にします。 |
| 高精度な業務仕分け | マネージャーが設定したキーワードや、メンバーが最初に行った業務分類をシステムが学習。以降、自動でプロジェクトやタスクに工数を紐付けします。 |
| 正確な業務コスト把握 | 曖昧な自己申告ではなく、データに基づいたプロジェクト別・業務別の正確な工数をリアルタイムで把握でき、赤字案件の早期発見や見積もり精度の向上に貢献します。 |
| 自動勤怠打刻 | 業務状況から勤務開始・終了時間を自動で生成。打刻忘れを防ぎ、労務管理の負担も軽減します。 |
中〜大規模組織における工数管理の最大の障壁である「現場の入力漏れ」と「管理側の集計工数」の削減に特化しています。
PCの利用状況から自動で工数を取得・仕分けするため、現場の負担を極限まで抑えつつ、精度の高い工数データをリアルタイムで確認することができる自動化ツールです。
8. まとめ:工数管理は「改善」のための第一歩
工数管理は、単なる時間計測の事務作業ではありません。プロジェクトの健全性を守り、チームメンバーがより価値のある仕事に集中するための「組織の健康診断」です。
この記事で解説した重要ポイントを振り返りましょう。
- ・目的の共有: 監視ではなく「改善」のためであることを現場に伝える。
- ・適切な粒度: 現場の負担にならない「1〜4時間」程度の粒度で管理する。
- ・継続のコツ: 入力ハードルを下げ、分析結果を必ず現場にフィードバックする。
- ・ツールの選択: 規模に応じて、エクセルから専用ツールへの移行を検討する。
工数管理を正しく運用できれば、収支の安定、リソースの最適化、そして何よりチーム全体の生産性向上が実現します。
まずは「完璧」を目指さず、今日から大まかな時間の記録から始めてみませんか?その一歩が、あなたのチームの働き方を大きく変えるはずです。




