マネジメントの課題と解決方法!必要な能力や予防するポイントも解説
管理職やチームの責任者が主に求められる業務はマネジメントです。チームの目標設定や進捗管理だけでなく、人材育成を始めとしたチーム運営全般を担います。
マネジメントする上で発生する課題は様々ですが、多くの問題には傾向があり、方法を知って入れば予防や対策も決して難しいものではありません。
そこで、この記事ではよくあるマネジメントの課題と解決法、マネジメントのトラブルの予防法を中心にご紹介します。
よくあるマネジメントの課題と解決方法
マネジメントの問題は、自身の問題だけではないため改善が難しく感じる方も多いでしょう。しかし、それぞれの性質や傾向が分かっていれば解決できる課題もあります。
まずはそれぞれの特徴を理解していきましょう。
部下とのコミュニケーション
部下が「指示通りに業務してくれない」「報告・連絡・相談が無く、対応が遅れてしまう」など、コミュニケーション不足による課題で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
コミュニケーションは必要に応じて積極的に声かけをしたり、メールや業務用のメッセージアプリの活用、メモなどを利用して指示や質問を可視化することも有効です。チーム内での情報共有のルールはシンプルに分かりやすくすることで誤解やすれ違いなどのミスを最大限減らせます。
部下とのコミュニケーションを円滑にするためにも、最低でも月に1度の面談を通して部下の意見を聴き、信頼関係の構築を図りましょう。
部下の生産性
チーム全体や一部の部下の生産性が上がらない、もしくは下がってしまうと、業務が滞るだけでなく、モチベーションや評価の低下に繋がるなどの影響が出てきます。
生産性が低い部分は、部下と面談やミーティングを通してコミュニケーションを取りながらワークフローを見直し、不要な作業を減らすなど問題を取り除いていきましょう。
この時のポイントは一度の改善で終わるのでは無く、定期的に見直し改善することです。マネージャーが継続して改善に取り組むことでチームの意識が変化し、成果が見え働きやすくなることでモチベーションの向上にもつながります。
仕事の偏り
能力があるメンバーに業務が偏ることの原因はマネジメントの問題もありますが、何らかの理由で本人が業務を抱え込んでいることも考えられます。
一人のメンバーに業務が集中している場合、病気や家庭の事情などで担当者が休んだ時、対応や引継ぎができるメンバーが居らず業務の遅れや損失が発生しかねません。
人材教育方法を見直したり業務内容やワークフローの見直し、各メンバーのスキルの精査、複数人での仕事のシェアなど、仕組みを変えることで業務の偏りを解消していきましょう。
一人だけに業務が集中している状況は突発的な状況に対応できないだけでなく、人材育成の遅れやチーム全体の生産性の低下にも繋がってしまうため、早急に解決したい課題と言えるでしょう。
チームワークの悪化
上記のように一部のメンバーに業務が偏ったり、メンバー全員が自分の仕事に手一杯になりコミュニケーションが減るなどが原因でチームワークが悪化することがあります。
1つの業務を複数で担当したりチームを少人数で構成することで、意見しやすい環境を作りましょう。
さらに、個人の目標だけでなくチーム全体の目標を設定し、そのための役割を明確にするとチームで仕事を進める事を意識できるようになります。チームワークが悪化するきっかけは様々です。
はじめは些細な原因が大きく発展してしまう場合もありますので、少しでも違和感があれば早めに軌道修正していきましょう。
管理職が業務を抱えすぎる
業務の偏りは部下やチームのメンバーだけの問題ではありません。部下にも任せられるはずの業務を管理職になってからも抱え込む場合もあるでしょう。
任せる手間よりも自分でやった方が早いと判断してしまうと、その場では早く終わりますが、部下が育たずいつまでも負担が増え続けてしまいます。
さらに、通常業務に圧迫されマネジメントがおろそかになると管理職としての役割は果たせません。マネジメントに集中するためには、抱えている業務を部下と共有して少しずつ任せることや、通常業務をチームで進めるためのワークフローの見直しは欠かせません。
マネジメント業務や部下のフォローに努めることで、自身はマネジメント業務に集中しながらチーム全体で生産性を上げる基盤作りに繋げていきましょう。
目標達成へのプレッシャー
業績が評価に直結したり目標が高すぎたりすると、大きなプレッシャーになってしまいます。とくに管理職の経験が浅いと失敗への不安が大きく、業務過多やチームへのプレッシャーにも繋がりかねません。
目標を達成することはもちろん大切ですが、チームやマネージャーの努力だけではカバーできない課題もあります。管理職として大切なのはその失敗や成功から学び、軌道修正や部下をサポートすることです。
漠然と高い目標に向かうと不安も大きくなるため、達成に向けた具体的な取り組みや段階的な目標に落とし込むことで達成感を得やすくし、モチベーションを維持しながら業務を進めていきましょう。
難しいメンバー
管理職になると扱いが難しい部下やチームメンバーでも一緒に仕事をし、教育しなければなりません。その場合は他のメンバーを含めて個人面談を設け、トラブルなどを事前に把握することが大切です。
とくに難しいメンバーとの面談では特に傾聴に努め、まずは意見を受け止めましょう。ただし、自分の部下だからといって責任を抱え込む必要はありません。
大きな問題になる前に上司や人事などに相談することで、指導方法や対処法を学べるほか、いざというときの対応を先に検討できるため、安心して改善できる環境を整えられるでしょう。
課題の改善方法がわからない
マネージャーとしての悩みや課題だけでなく、部下の相談に乗るときにも改善方法がわからない場合もあるでしょう。
もちろん本当に難しく複雑な問題もありますが、課題を難しく捉えてしまっているだけの場合は問題を可視化・言語化することで改善方法を検討できます。
まずは問題を構成している要素を書き出し、それぞれの解決策やその優先順位を考えましょう。
一人で考えても視野が狭くなり解決しないこともあります。その場合は、積極的に他の管理職や他のメンバーに相談することで、違う視点から課題や解決法を探すこともおすすめです。
課題解決が実行されない
課題解決のためにプランを立て、周知しても実行されずに状況を改善できないことがあります。
このような場合、プランを実行しない周囲に問題があるように見えますが、ほとんどが課題そのものの認識からプランを決定するまでの過程に問題がある場合がほとんどです。
管理者とメンバーの間の課題に対する認識の違いや、プランが現実的でないなどの問題に加え課題解決策だけが先行し、原因と目的が伴っておらず「よくわからないから今まで通りでいい」と誰も行動しないなどの結果に繋がってしまいます。
そうならないためにも、ミーティングなどを通して問題提起から解決策までのプロセスにチームの意見を反映し、より積極的に参加できる環境を整えましょう。
マネジメントの課題を解決する方法
よくある課題の解決方法には多くの共通点があり、これらのコツや考え方を繰り返し実行することで新しい問題にも落ち着いて対応できるようになります。
ここでは、その共通点についてをひとつずつご紹介します。
課題の見える化
マネジメントしているときの課題は「言語化されている課題」と「言語化されていない課題」にわかれており、言語化されていない課題は問題として認識されていないため解決は簡単ではありません。
課題の解決のためには課題の言語化、見える化が必須です。課題を見える化するためには、以下の手順で進めましょう。チームの働き方や成績、業務内容などの現状を把握する出てきた課題の原因や要素を洗い出す
以下の表のように、プロセスを具体例と共に落とし込むことがおすすめです。
現状 | ・チームの営業成績が上がらない ・特定のメンバーのみ成績が上がっている |
課題・要素 | ・事務作業が多く営業事務もいないため、営業活動に集中できない ・事務作業もメンバーによって書式が違い共有されていない ・営業のワークフローが確立しておらず、個人や教育係によって方法が違う ・チーム内で情報の共有や引継ぎが無いため非効率な営業活動が行われている ・目標やノルマが個人に設定されているため、失敗や成功例の共有がない |
上記のように、1つずつ要素を書き出すことでマニュアルや業務の基礎となるワークフローが無いために効率が低く、事務作業も書式が無ければ非効率で、共有も難しくなってしまっていることがわかります。
現状を捉えずに「もっと営業活動に集中してほしい」と伝えても結果が出ないだけでなく、モチベーションの低下にも繋がりかねません。
営業成績が上がらない理由を1つずつ言語化することで、効果のある改善策を見つけましょう。
解決する課題と目的を共有
管理職と言えど、突然なんの説明もなく課題の解決策だけを提示してしまうとチームを戸惑わせてしまうため、課題と目的の共有が大切です。
共有しておかないと思った通りの結果に繋がらないなど、課題解決が遅れてしまう原因になりかねません。
課題の解決方法を探す段階から情報共有していれば、メンバーからの提案を期待できるだけでなく、実行した後も解決策に対するメリットやデメリットも発見しやすくなり、より効率的に課題を解決できます。
具体的な行動を明示
管理職がするべきなのは具体的で現実的な方法の明示が大切です。例えば、急に「働き方改革の為残業は月20時間まで」と突然周知されても、業務量は変わらないため現場からは不満が出てしまうでしょう。
解決のためには、無駄な会議があれば削減し、業務管理システムやデータ管理ソフトなどを活用して事務作業を効率化するなどの具体案を提示しましょう。
課題解決のためにできる事が明確になっていれば、まず実行することでメリットやデメリットも得られるため、課題解決するためには具体案の提示が効率のよい方法と言えます。
メンバーに耳を傾ける
メンバーや現場の意見を聞かずに、管理職からの目線のみで課題を見つけ解決策を提示してしまうと、メンバーとの認識の違いがそのままになってしまいます。
多くの場合、課題の解決の原因を知っているのも解決策を実行するのもメンバーであり、管理職はあくまでもそれらの管理、調整、サポートが仕事です。さらにメンバーとの信頼関係が無ければ、課題解決もままなりません。
メンバーとの信頼関係を構築し、効率的に課題解決を進めるためにもメンバーの意見には積極的に耳を傾けましょう。
継続して改善を行う
1つの課題を一度改善したからとそのままにしてしまうと、その改善策から新たな問題が発生する場合もあります。課題を改善しても定期的に見直し、修正することでよりメンバーが働きやすい環境を作り、成績や生産性を向上に繋げましょう。
さらに、常に課題を見つけ改善していく事を習慣にしていく事で、突発的なトラブルにも冷静に対処できる問題解決力を高めることも可能です。
これは、マネジメントに限らず社会人にとって欠かせない能力ですので、チームを巻き込むことで全体の能力向上に寄与できます。
マネジメントの課題解決に必要な能力
マネジメントを任されると求められる能力は多岐に渡りますが、とくに課題解決のために必要な能力は以下の通りです。
・コミュニケーション能力
・人材育成能力
・目標設定力
・進捗確認能力
・意思決定力
ここでは、それぞれの詳細について解説していきます。
コミュニケーション能力
課題解決のためにはメンバーの協力は欠かせません。メンバーや自身の上司との良好な人間関係の形成は、課題解決のスピード感や達成度に直結します。
特に、人間関係のトラブルや一部のメンバーのフォローなどでは高いコミュニケーション能力が無ければチーム全体にも影響するため、どのような課題にも必要な能力です。
人材育成能力
メンバーを全て一人でフォローすることは現実的ではなく、マネジメント業務に支障が出かねません。ですがチーム内でのフォローアップ体制を作り適切な人材育成を行えば、コミュニケーションも活発になり、育成段階の課題も早急に見つける事が可能です。
さらに、課題解決能力が高い人材を育成できればチームのスキルそのものが向上し、結果に繋がるチームの育成にも繋がるため、適切な人材育成能力は欠かせません。
目標設定力
課題や問題を見つける能力があっても、適切で具体的な目標を設定できなければ自身やメンバーの行動の変化、課題の解決には繋がりません。現状を把握した上で具体的な行動目標や数値目標を設定できる力は、目標達成力やマネジメント能力に直結します。
チームのモチベーションを向上させ、課題解決のための協力を得るためにも目標設定力は重要です。
進捗管理能力
課題解決案を実行してもそれが、どの程度実行されているのかを確認するには進捗確認能力が求められます。それだけでなく、課題を見つけるための日々の業務の進捗やメンバーの業務実態を把握するためにも大切な能力です。
この能力が高ければ、課題解決だけでなく人材育成や通常のマネジメント業務でもよりよい結果を残すことができます。
意思決定力
個人の課題の設定や個人の裁量内での決定権はある程度部下に任せられますが、チームの目標やトラブル対処、チーム内の課題解決などはそうはいきません。
チームの意見を聴くことは大切ですが、最終的な方針や課題を決めるのは管理職やマネージャーの役割です。その結果への責任も伴いますが、決定に伴う責任を持てなければチームも安心してついてきてはくれませんし、マネジメントとは言えません。
この意思決定がどの程度的確でスピード感を持てるかどうかで今後のチームの成長スピードにも影響します。
マネジメントの課題やトラブルを予防するポイント
マネジメントにおいて、すでに起きている課題やトラブルについてだけが対応するべき課題ではありません。発生する前の課題やトラブルを事前に把握し、先回りして対処もしくは対処できる体制を整えておくこともマネージャーの仕事です。
ここでは、トラブルを予防できるポイントについてご紹介します。
原因の究明
ミスやトラブル、課題には必ず原因や理由があります。これらの原因や要素を深く掘り下げないまま解決策を用意してしまうと、対処法が間違っていることに気が付かないまま課題も解決せず悪循環に陥ってしまいます。
1つでもミスがあれば根本的な原因を究明・言語化し、問題を明確にしてから解決策を考えることで同じ問題を防ぎましょう。
仮説と検証
1つの課題があり、明確な原因や解決法が分からない時は仮説と検証を繰り返す事で解決でき、その後の大きなトラブルの防止に繋がります。
さらに、業務効率化のための目標設定も同じ手法を利用することでいくつかの実行案を試し、メリットとデメリットを確認しながらチームに取って最適の手段を選択できます。
この方法は1つの問題が解決した後の検証や解決法のアップデートの際にも使え、問題解決力の向上にも役立ちますのでぜひ身近な問題から取り組んでみましょう。
リスク管理
管理職は人材育成や進捗管理など多くの業務を担いますが、責任者という点で把握、対策しなくてはいけない事がリスクの事前管理です。社内で対処できる事はもちろんですが、お客様や取引先、社会に影響を与える可能性があるものはできる限り始めに洗い出し対策しておきましょう。
必要に応じてメンバーへの周知や担当者の管理をすることで事前にミスを見つける体制を整えておくことが重要です。
進捗確認
目標達成や課題解決のためには適切な進捗管理は有効な手段です。単純に達成度を確認できるだけでなく、遅れやトラブルを事前に把握し、さらに小さな成功体験の積み重ねによるモチベーションの維持もできます。
少しの遅れやトラブルも早い段階で発見できれば、大きなトラブルを事前に予防することも可能です。
部下の声を聞く
トラブルを事前に把握し予防するためには、部下との日々のコミュニケーションが重要です。部下から相談しやすい体制を整えておくことで、問題が大きくなるまで抱え込んでしまうなどの二次トラブルを避けられます。
大きなトラブルを事前に解消できるように普段からこまめに声かけをし、話しを聴く習慣を付けておきましょう。
まとめ
マネジメント業務では、日々多くの問題や課題に直面してしまう事も多く、その原因も千差万別です。しかし、小さな問題から日々少しずつ管理し解決していくことで、大きなトラブルを予防し、部下は結果を出すための業務に集中することができます。
日々、自身のチームや上司とのコミュニケーションを意識し、必要に応じて周りの手助けも得て、多様な意見を取り入れながらチームや組織のための課題解決法を探し、実践していきましょう。